彼女はパニック障害という病気。 初めて会ったときは全くそんな病気なんて思えないぐらい普通だった。 口下手な俺に一生懸命話してくれて。俺は一目惚れだった。 一人では電車も乗れず、いつも俺が手をひいて行動した。初めはそんな彼女がいとおしくて守ってやるんだ!って。
付き合って半年… いつも発作を起こして寝込んでばかりの彼女をだんだんやっかいに思えてきた。 俺は仕事や友達のせいにして彼女との距離を遠くしていった。
隠れて浮気もした。 でも彼女は全部わかっていた。それでも笑ってた。
こんな私といても寂しいでしょ。もっと遊びたいでしょって。 私はあなたと会う前からこの病気だし、だから一人でもだいじょうぶだよ。 あなたが楽しくいられる人ならその人を大事にしてあげて…。 その言葉も彼女はやっぱり笑って俺に言った。
別れてから気づいてきた。 なんだか右手が寂しいんだよ。いつも彼女が必死に握ってた俺の右手。
二人でハマったゲーム。
彼女が好きだったクレープ。 一人で食べたら泣けてきた。
おまえはいつもこっそり安定剤飲みながら、平気なふりして一緒に食べてくれてたんだよな。 おまえにとっては一歩外に出ることが死ぬ思いだったんだよな。
自分から俺の手をふりほどいて。 笑いながら俺にさよなら言ったあとにほんとうに二度と会うことのないとこに逝ってしまった。
今でも天国で笑ってるんだろ。 ひとりぼっちの俺のこと。 おまえがとなりにいることがすごく幸せだったことに後からわかるなんて。
ばかたれ!俺…
夢でいいから逢いにきてくれ。 謝りたいことたくさんあるんだよ。
もう一度抱きしめたいんだよ。俺の右手をギュッと握ってくれ…
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