私の家にはオウムがいる。ちょっと小柄でうるさいが《好きな言葉を覚えさせてみたい》そんなことで飼い始めた。
私は母親と二人暮しをしていた。6人家族だけど父親と母親は離婚している。兄は結婚し、その下の兄は仕事の研修で横浜に、姉は出稼ぎで愛知へ。・・・と言うことで今は二人暮しとオウムを1匹を飼っています。
まずはオウムの名前を考えなきゃいけない…。 ずっと考えている内に2時間が過ぎていた。
…【トオル】でいっか。 そんなこんなでトオル(♂)が家族の一員になった。
それからと言うもの、トオルに次から次へと言葉を教えていった。…まずは基礎から。 『おはよう』 『おやすみ』 『ただいま』 『お帰り』 『ありがとう』 『じゃあね』 トオルは覚えが早かった。3日もしないうちにマスターしてくれた。そしてまた。
『●●(私の名前)』 『お母さん』 『いただきます』 『ごちそうさま』 たまに意味が合っていないが、覚えてくれた。
―それから2年― TVの言葉や日常生活の会話、来客の方言…沢山覚えた。 秋、家に帰宅するとトオルがカラスの鳴き真似をしていた。《ガーガーガー》いつもは帰宅すると『ただいま』って言ってくれるのに… 何かがおかしい。 様子が変だ。
…電話が鳴った。 警察からだった。
母さんが死んだってさ。
訳が解らなかった。
次第に見えてくる現実。 肩が震えて涙が止まらない。
―あれから3週間― 私は現実逃避していた。 それでもトオルも気付いたのだろう。 仕切りに鳴くトオル。 落ち着きが無いトオル。 エサも食べない。 電話が鳴っても真似ない。
トオルが鳴きだした。 『母サン、母サン』 『ネェ、ネぇネぇネぇネぇネぇネぇネぇネぇネぇ』 『ゴ飯マダ??』 『オ仕事オ疲レサン♪』 …意味もなく、鳴き続ける。
やめて、やめて、やめて…。 聞くのが苦しくてトオルを押し入れに閉まった。 それでも鳴き止まない。 『母サンドコ??母サンドコ??』 『母サンドコ??母サンドコ??』 押し入れを勢い良く開けて叫んだ。《母さんはもう居ないんだよ!!!!!》
自分で認めていた・・・
母さん、死んじゃったんだ…。
トオルが話かけた。 『天国イク??天国イク??』 …何処でこんな言葉覚えたのかな…。
―それから17日後―
『コワイ、コワイ、コワイ、コワイ』 そう言いながらトオルはこの世から飛び立った。 母さんの元へ飛び立った。
私は大切なモノを2つも失った。
―あれから月日が回ったけどまだ怖い。今度は何を失うんだろう…そんなことばかり―
…母さん、トオル、ゆっくり休んでね。ありがとう。
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