12月24日、弟の命日でもあり、母さんの命日でもあるこの日は初雪が降った。
15才の時に俺に弟ができた!この歳で兄弟ができるなんて思ってもみなかったから、スッゴい嬉しくて、親より先に名前まで決めていた。
父さんも母さんもそんな俺を見て、名前を決めていいよ!って言ってくれた。
でもそんな幸せは長くは続かなかった。
予定日の一ヶ月前、母さんが破水し即入院となった。
母胎共に危険な状態で最悪の場合、赤ちゃんを諦めなければならなかった。…または…
母さんは絶対赤ちゃんを産むってきかなかったらしく、父さんもしぶしぶ納得したらしい。
俺は納得できる訳がなく、母さんを説得した…。だって…、赤ちゃん産むって事は母さん死んじゃうって事でしょ? 赤ちゃんを諦めなきゃならないことは辛いけど、母さんがいなくなったらなにもできないんだから…
母さんは俺の必死の説得に負けたみたいで、考え直してくれた。 赤ちゃんを産んでも母さんは死なないって…。
俺もしぶしぶ納得した。 予定日は一ヶ月後のクリスマスイブ、いい事が起こりそう…
そして、12月23日一日早いけど2650cの少し小さいけど元気な赤ちゃんが産まれた。
母さんは赤ちゃんの顔見る事なく12月24日早朝、亡くなった。
そして不幸なことに、その6時間後赤ちゃんも亡くなった。 あんなに元気に産まれてきてくれたのに…、 母さんだって、死なないって言ったのに… …嘘つき…
五日後、通夜も終わり、久しぶりに父さんと二人でご飯を食べた。 初めて食べる父さんの手作り料理、 『母さんの味には勝てないけど、まずくないだろ』 『母さんの料理に比べれば相当まずいよ』なんていいながら二人で笑いあった。 不思議だよな、まだ五日しか経ってないのに…
その日の夜中、父さんが飲めない酒を飲んで…そして…泣いていた…俺の前では無理して、笑って…、 大人だからって立ち直れるはずないよな、まだ五日しか経ってないんだから…忙しすぎて泣く暇すらなかったんだから…
俺達は大晦日も元旦も何もせずに過ごした。
そして、あっという間に一年が経った。 初雪の降ったクリスマスイブ、この時期には珍しいチューリップの花を持って二人でお墓参りにいった。 新しいお墓には母さんの名前と『健伸』と刻まれています。 天国では伸び伸びと健康で生きていて欲しいという願いを込めて父さんと考えた名前です。
神様…もし願いが叶なら…、
二人とも生きていて欲しかった…
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