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クリスマスになるとスポンジボブを思い出す。
ボブと僕が出会ったのは四歳の頃。
きっかけは、おふくろがクリスマスプレゼントとして僕に買い与えた等身大のボブのぬいぐるみ。
当時、女手一つで僕を育ててくれていたおふくろにとって、海外からの輸入物であるボブのぬいぐるみはとても高価な物。ましてや等身大である。一人っ子だった僕に寂しい思いをさせないようにと、無理をして数あるボブのぬいぐるみの中から等身大をクリスマスプレゼントに選んだのだろう。
その年のクリスマスはおふくろと僕とボブの三人、テーブルを囲んで聖なるクリスマスを祝った。足の届かない高い椅子にちょこんと腰を掛けるボブを見て、とても愛らしく感じたのを今でも覚えている。
それからというもの、毎日のように僕はボブと話をし、公園に出かけ、野原を駆け回った。まるで兄弟のように仲良く、片時も離れることは無かった。

翌年の三月、僕は重い病気にかかってしまい、入院することとなった。検査が続く中、長期の入院が必要という事になった。僕の身体は相当深刻な状態にあった。おふくろは仕事を辞めてでも、付きっきりで看病するつもりでいた。僕はなんとしてでもそれだけは避けたかった。
「ママ、僕寂しくなんてないよ。だってボブが居るんだから。」



病状は奇跡的に回復し、八ヶ月の入院生活の末、退院することができた。

その年のクリスマス、僕の隣には出会った時と同じようにボブがちょこんと椅子に腰掛けていた。
「ボブ、ありがとう」
僕は病院での入院生活の間ずっとそばに居てくれたボブにお礼を言い、ほっぺにキスをした。



たくさんの時間をボブと過ごした。どこへ行くにもボブを連れていった。ある夏の日、おふくろは僕をボーイスカウトに入団させた。アウトドアを経験させて、強い子供に育てたかったのだろう。僕自身も興味のあるものだったので、とても楽しみにしていた。
ボーイスカウトとしての活動初日、僕はボブをリュックに詰め、集合場所へ向かった。その日の活動は山でのハイキングだった。僕は人見知りはしなかったが、幾分内気な性格だったため、ボーイスカウトのメンバーになかなかとけ込めずにいた。途中の休憩時、僕はボブをリュックから取り出し、一緒に山の中腹からの景色を眺めていた。すると横から、メンバーの一人が僕をからかい始めた。それに便乗するように周りの子も集まり僕をからかい始め、ついにはボブを僕から取り上げた。
「返してよ、ボブは友達なんだ。」
からかいはますますヒートアップし、ボブを投げてパスし合い始めた。そのとき、一人の子がキャッチミスをし、ボブは崖を転げ落ちていった。
「ボーーーーッブ!!」
僕は泣き叫んだ。
何も、考える事ができなかった。
ただぽっかりと、胸に穴が空いた感覚が残るだけだった。
その喪失感は冬になってもまだ消えなかった...。









その年のクリスマス、僕の隣には等身大のドラえもんが椅子に腰掛けていた。
笑顔のドラえもんを見て殺意が沸いたが、不安そうなおふくろの顔を見て気を取り直した。
「ありがとう...ママ..。」
次の日の朝にはドラえもんは焼却した。ボブの席にドヤ顔で座っていた猫型ロボを許すことはできなかったのである。
ボブは今も僕の心の中で生き続けている。


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