母が亡くなって十年以上経ちました。 それでもまだ母の死に際の姿が薄れません。 乳がん摘出後十年経っての再発でした。 死の半年以上前から体調が悪いと床に伏せっていた母。 私の記憶の中ではいつも母は 「具合が悪い具合が悪いよ」と言っていました。 毎日毎日そんな愚痴を聞いていた私は、 家事をサボりたいんだろうと、思っていました。 当時高校三年生だった私は美大に行きたくて、ずっと「行くからね!」と宣言していましたが、家の事情は芳しくなく、 どこの大学でも進学するのは難しい状態でした。 イライラを当り散らして 「おかあさんはさぼりたくてそんなこといってるんでしょ!!!」 今にして思えば本当にひどいことを言ったと思います。 小さい頃から絵を描くのが好きで 「お前は絵描きになったらいいよ」って言ってくれた母でした。 博打と酒と女好きの父で収入がほとんどないのに「絵描きになったらいいよ」って 応援してくれたのは母でした。 大学も行ったらいいじゃん、って。 でも、 それでも大学進学が脆くも崩れ去ったあと、私は母にとても辛く当たりました。 癌の再発も知らないまま…。 私はやけっぱちで始めたアルバイトを3つ4つ掛け持ちで家にもほとんど帰らない状態。そんな中、風邪だと思って臥せっていた母が知らないうちに入院して私が見舞いに行った時にはすでに話すこともできない状態になっていました。 それでも「死ぬなんてないよね…」と 思っていました。 私が会いにいってももうわからないらしく、表情はとても訝しんでいるようで、しかめっ面をしていました。 その代わり父がいくととてもニコニコしていました。 浮気だの借金だの散々苦しめられたのに、 やっぱり父のこと、愛していたんでしょうか。 母が亡くなり1年もしないうちに父も枯れるように亡くなりました。 今でも母が夢にでてきます。 忙しくて部屋がかたずけられない私ですが、夢に出てくる母は、姿は見せないのに いつも部屋をかたずけてくれるのです。 目が覚めていつも涙してしまいます。 そんなときいつも思うのです。 「おかあさんほんとにごめんね」って。
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