私は今、看護師を目指して学校に通いながら病院で働いています。そこで出会った男女の話です。
旦那さんが脳梗塞で倒れ左半身麻痺で腕と足がうまく動きませんでした。
そんな旦那さんを気遣い、奥さんは付き添い寝泊まりをしながら介護していました。その男女は結婚しているわけでもなく、いつも一緒にいるんだと言っていました。でも、とても仲良く私たち職員は「旦那さん」「奥さん」とよんでいました。
お昼には奥さんが旦那さんと麻痺の手をつなぎ動かしながら一緒に歩いていました。二人三脚みたいな感じでその姿がすごく好きでした。奥さんが家に洗濯などをしに帰っている間、旦那さんはいつも寂しくしています。
そういう時は私か誰か職員が旦那さんとお話をするのですが、私がある日「奥さん家に帰っちゃって寂しい？」と聞いたことがありました。そしたら旦那さんは「いつも一緒にいるから寂しいよね、でも色々としてくれるしかぁちゃん(奥さん)には恥ずかしいから言えないけどすごく有り難いよ。だからこそ迷惑かけちゃいけないんだけど甘えちゃうんだいな」と微笑みながら恥ずかしそうに言ってました。それから数日後、旦那さんは亡くなりました。農薬をたくさん飲んでしまってすぐに胃洗浄を行ったり透析を行ったりできる限りのことはしましたが助かりませんでした。奥さんは旦那さんの最期をみとったあと私たちにしっかりとした面持ちで「ありがとうございました」と言いました。その言葉と顔は今でも忘れません。