去年の11月、親父が肝臓ガンだって宣告された。 7センチの腫瘍が出来てた。 でも今年の1月、右の肝臓を丸ごと切除して助かった。 そして半年くらい経過した時には医者から少しなら酒を飲んでもいいと言われて親父はバカみたいに喜んでた。 一日一杯と言われ、酒豪の親父にはしんどかっただろうけど、それでもその量を守ってた。
それから普通の生活が続いて、今年の8月。
左半分の肝臓にもガンが出来てた。 それも6つ。
病院の先生からは『なるべく一緒に居てあげて下さい』と言われた。 事の重大さが身に染みて分かった。 選択肢は 坑ガン剤で一年行きるか (余命一年以内) 自由に暮らすか (余命三ヶ月以内) 臓器移植 のどれかだった。
俺は迷わず臓器移植のドナーになると言った。 親父は『ありがとう』と泣きながら言ってた。
親父に助かって欲しかった。 血糖値や血圧や食事にも、すごく気を付けてドナーになれるまであと少しってとこまで近付いた。
だけど俺にかかる精神的な負担やプレッシャーも半端じゃなかった。
そんなある日、ふとした時に母さんと口論になった。 その時につい『こっちだって気が狂いそうなのを我慢しとるんじゃ。お前ら身勝手過ぎやろがボケ』とか言ってしまった。
その日はそれで終わった。
三日後に親父から電話があった。 『お前の肝臓使えやんらしいからお前にはもう用無くなったわ。お疲れさーん』 って言われた。
もちろんブチ切れた。 『そーなんや。じゃあさっさと死になよ。お疲れさん。』って言うなり一方的に電話を切った。
その四日後、電話が来た。 『最後くらい一緒に居てやって下さい。お願いします』親父の担当医からの電話だった。 『は?もう親子じゃないっすから。』って電話を切った。 その翌日、死んだ。 何か頭が真っ白になった。 意識が無くなった。
目が覚めたら翌日の夕方になってた。 母さんが後を追って台所で自殺してた。
母さんの横に遺書があった。 気持ちが落ち着いてから読んだ。
●●(俺の名前)へ。 最後まで身勝手な事してごめんね。こんな勝手な母さんを許してとは言いません。 でも●●が勘違いしたままで居て欲しくないからこれだけは本当の事を言います。 ●●の肝臓はどこも悪くないんだよ。お父さんは●●が精神的に危ない状況だって分かってたみたいです。 だからあんな事を言ってわざと移植の話を中止にしたの。お願いだからお父さんの事は許してあげて下さい。
母より。
って書いてあった
‥‥何で自分の命より子供の気持ちなんかを優先してんだよ。ふざけんなよバカ親父
納得出来るワケねーだろ。
最初から本当の事言えよ。
そーゆートコがむかつくんだよ。
ふざけんな。
ふざけんなよ。
でも今更あがいたって何も変わらない。
せめてもう少し早くにそれが聞きたかった。
でも最後までカッコよかったぞ、親父。
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