24歳の秋。 2つ年上の彼(りょう)とは友達の結婚式の二次会で出会った。 その頃の私は半年後に留学を控えていた。
週末には毎週、食事に行き、夜景を見に連れて行ってくれたり、私の行きたいところに行ったり。 会えない日には仕事終わりに毎日長電話。 お互いに仕事のグチ、今日あった事。 話は何気ない事だったけれど、毎日彼と話をするのが楽しかった。
ある日彼が電話でこんな事を言った。 彼:『今日、仕事でいつも行く会社の事務員さんに電話番号もらったんだ』 私:『あっ、そうなんだ・・・。で、連絡するの?』 彼:『しないよ。だって俺にはさほがいるじゃん。』 私:『また〜。その人はどんな人なの?』 彼:『よくわかんないけど、俺より年上だと思う。』 私:『ふ〜ん。』 彼の冗談っぽく言ってくれたその言葉がなにより嬉しかった。 そんな事忘れて、いつものように週末には会って食事してドライブ。 でも、日に日に留学する日が近づいている。
ある日思い切って私は彼に言った。 私:『ねぇねぇ。』 彼:『なぁに?』 私:『さほが留学してる間どうするの?』 彼:『どうするって?』 私:『彼女とか・・・』 彼:『そんなのさほのこと待ってるに決まってるじゃん。何言ってんの?』 そう言って彼は笑っていた。 私:『ありがとう。がんばってくるね。』 彼:『夢なんだもん。応援したいから。』
彼に会える最後の日。 私:『ねぇわがまま言ってもいいかな?』 彼:『今に始まったことじゃないじゃん』 私:『もう〜!あのね、留学してる間連絡取ってるとさみしくなって日本に帰りたくなっちゃうから連絡取らないでいたいの。』 彼:『さほがそうしたいなら、そうしよ。でも、俺は待ってるから。帰って来る時は教えて。ちゃんと迎えに行くから。』 私にとって、彼は弱さも泣き言も言える、支えだった。
飛行機の中で、今は勉強にだけ集中しよう! そう決めた。
オーストラリアに渡り、毎日学校と家の往復。 慣れない生活習慣や言葉や。 彼が恋しくなる事もいっぱいあった。 でも、自分が決めたことだもん、泣き言は言わない!
友達とのメールのやり取りで彼の事は聞いていた。 その友達から聞く彼の事が心の支えだった。
日本に帰る日が決まった日。 1年ぶりの彼へのメール。 ずっと我慢してたから嬉しくってたまらなかった。 送信エラー・・・? あれ? 友達に聞いた。 友達:『あっそうなの。なんか携帯なくしちゃったみたいでさぁ。』 私:『そうなんだ。新しいアドレスは?』 友達:『アドレス聞いてないや。ごめん。』 私:『そっか・・・。迎えに来てもらう約束なんだけどな。』 友達:『なんかね、最近仕事忙しいみたいだから。さほが帰ってくるまでに聞いとくね。』
日本に着くのが平日の昼間だったこともあって、空港からは電車で家まで帰った。 その夜友達から連絡があり、ご飯を食べに行くことになった。
留学中の話をして一段落した時・・・ 友達:『さほにね、言わなくちゃいけない事があるんだ。』 私:『なぁに?』 友達:『実はりょうクンのことなんだけど』 私:『あっそうだ。連絡先教えてよ』 友達:『あのね、結婚したの。』 私:『えっ?何言ってるの?』 友達:『本当なんだ』 私:『え?だってメールでもいつもいろいろ教えてくれてたじゃん。』 友達:『ウソなの。ごめん。』 私:『誰と?』 友達:『よくは知らないんだけど、年上の人らしいよ』 私はすぐピンときた。 あの電話で言ってた人だきっと・・・ 友達:『しかもね、子供までいるんだ』 私:『・・・。いつ?』 友達:『さほが留学してすぐ。』
私は涙も出なかった。 二股だったんだ? あんなに一緒にいたハズなのに・・・? 私に言ってくれてた言葉、どこからどこまでが本当だったんだろう? 全部ウソだったの?
留学をして得たもの。 そして、失ったもの。
日本に帰ってきて1年以上が経った今。 いまだに恋愛ができない。 彼を超える人がいないのではない。 出会いがないわけでもない。
また、誰かを好きになって裏切られたら・・・と、どうしても頭の中をよぎるのだ。 楽しく食事してても。 ドライブしてても。 優しい言葉をかけられても。 『この人もきっとウソ言ってる。』 『いつかさほの前からいなくなるんだろうな』って。 この人じゃない・・・
一番信じていた彼に裏切られたその事を知った日から。 自分には何もナイことに気づいた。
友達って何? でも、そのウソは友達の優しさ。 自分でもわかってる。
いつか、また人を好きになる事ができるのかな? それはいつ? それは誰なの?
ふとした時、思い出す。 泣きたくなった時でも、今は支えてくれる人はいない。 真っ暗な部屋で一人ふとんの包まって涙する・・・
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