『分かったよ。いままで○○ちゃんのわがままをきいてくれてありがとうね』
今朝9時過ぎ、僕は心を無くした…自分の軽率な行動で…跡形も無く。
その人を初めて見たのは約10年前。近所のパチ屋だった。 何処にでもあるような常連同士の関係。しかし自分は一瞬で恋に落ちていた。 その人は家庭がある人で、その旦那さんとも仲良くさせて貰っていた。 朝一からスロットを並んで打ち、笑いあって楽しい日々が続いていた。 切ない片想いだった。 そんなある日、『モーニング食べに行かない?』と、メール。 自分は喜々として近所の喫茶店に行き僅かな二人だけの時間を満喫していた。 そこへ旦那さんが来て… 楽しかった夢みたいな時間はあっというまに現実に引き戻された。
それから約10年…一日たりともその人の事を忘れる日は無かった。
Pm11:45… 人目を気にしながら車に乗り込む彼女。 『もぅ!!今日は全然ダメダメだったわよ!』
『調子良いときもあれば悪い時も…ねっ』
『うるさいわよっ!』
…そう。偶然、本当に偶然に初めて会ったパチ屋で再会して、決して誇れる事ではないけど秘密の関係だ。 彼女は夜、隔日で仕事をしてるのでその仕事に行く前、約二時間が自分達のデートタイム。
ドライブが大好きで、田舎が好きで…僕達のデートはいつもナイトドライブだった。
『分かってる…分かってるんだ、お互いに…報われないし、決して日の当たる場所で手を繋げない事位…』 でも…10年前の事件以後も毎日好きで好きで仕方なくて、逢いたくてたまらなかった人が今は自分の肩に頭を乗せてスヤスヤ寝息を立てている。 『その日』が来るまでの間だけど、決して『愛してる』と口に出せない関係だが…精一杯愛した。そして彼女も自分を受け入れてくれた。二人が初めて結ばれた日、自分は両手を広げて優しく迎えてくれた彼女の胸で不覚にも泣いた…彼女の優しさと切なさが心の奥まで入って来て、自然と涙が溢れて止まらなかった。後から後から流れでて嬉しくて愛しくて…切なくて…………。だけど誰よりも愛していた。
…それから約一ケ月後の昨晩
『んじゃ、行ってらっしゃい☆頑張ってね!』
いつもの様に仕事場に送り届けて笑顔を交して帰宅した。
『そう言えば…携帯電源切りっぱなしだったっけ?』 …以前付き合っていた元彼女が別れてからもずっと復縁を迫ってきていて、それこそストーカー並に電話、メールをしてくるので、普段なら携帯をマナーモードにするだけなのだが、その日は何故か電源を切ってしまっていた。
不在着信履歴28件 未読メッセージ16件
……………あなたが戻らなかったら私は生きてる意味がない、死んだ方がいい…… 過去に未遂があるだけに、思わず電話をしてしまった。 それが…いや、その彼女と付き合っていた過去時点で歯車は狂いだしていたのかも知れない…。
『私怒らせると怖いよ?知ってるんだから…○○ちゃんでしょ?あなたと一緒にいるところの写真があるんだけど…それに○○ちゃんって△×町でしょ?』 『今、連絡があってマンションの前にいるから後は旦那さんの所にこの写真を持っていって…後は分かるよね?』
探偵とヤクザに頼んだらしい…。 最悪の展開だ…自分達(自分と○○ちゃん)の関係上警察に届ける事も出来ず… 『…分かった、俺はどうすればいいんだ?』 『別に?あなたがしてることは悪い事でしょ?他人の奥さんにちょっかい出して…』 『確に悪い事だって分かってる…悪かった。だから、どうしたら止めてくれる!?せめて○○ちゃんの家庭を壊す事はしないでくれ……頼む。』
『じゃあ、今から私のウチに来て目の前で○○ちゃんと別れて!!じゃないともう、あなたのウチにも向かってるから…』 『…………分かった……』 正直自分はどうなっても良かった。事実、朝向かってる時にこの後刺される位の覚悟はしていた。だけど○○ちゃんの事だけは守り抜く覚悟でもあった…
部屋に着くと本職が二人程居た。その奥には元彼女がパソコンをいじっていた。 『電話して…でないならメールして…』 『………はい…』 その状況下ではそれしか無かった………… 『おはよ、お疲れ様。突然だけど、考えて考えて…もう会えない。やっぱり旦那さんの事もあるし家庭を壊す事はできないから…いままでありがとうね』 ………キーを一つ押すたびに涙が溢れそうになった。 一つ押すたびに思い出が消えて行く気がした…。 ……送信……………。
『返事が返って来るまで帰さないから…それに別れるフリして…なんて考えないでね、あなた達怪我しちゃうかもね…目はどこにでもあるから………』
…………メール受信中……… 『分かったよ。いままで○○ちゃんのわがままをきいてくれてありがとうね。』 ……全てがその瞬間に真っ白になってそれ以降約2時間の記憶が無い…殴られたりしては無いようだが、我に返った時に、そいつが言うには小学生かそれ以下の年齢の言動だったらしい………。 今,この文章を書いている最中も涙が止まらない、いつかは終わりが来る関係。だから夢から覚めて現実の世界に戻っただけかも知れない……………。 でもまだ、左手に冷え症の細い手の感触がハッキリと残っている。触れた柔らかい髪の感触と香り………いつも優しく包んでくれた笑顔………………。
○○ちゃん……ごめんなさい。理由もちゃんと言えなくて、でもあなたは今まで、そしてこれからの自分の人生の中でたった一人の女性です。あなた以外を心の底から愛する事なんて僕には出来ません。 あなたと過ごした約一ヶ月半、本当に短かったけどケンカもしたし星を見に行ったりしたよね?その全てが自分の最後の支えです。 …………だけど……………やっぱり逢いたいよ………○○ちゃん一度も言えなかったけど、誰よりも愛してる、心の底から愛してるよ。いつまでも………。
この話は全てが今日起こった事実です。願わくば○○ちゃんにこの想いが届く事を……… 真也
|