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私が小学生3年生の時、まだ世界が遠くて近かった頃の話し。

小学3年のある日、私は姉と姉の友達とで遊んでいました。
姉の友達が急に「足の悪い猫がいるから見に行ってみない?」と言ってきました。
私達三人は近くの家に行ってみると、そこには、足の動かない猫が「にゃあ」と鳴いていました。
足の大腿骨が折れてしまっていて、前足で動きお尻を引きずる形でいました。

「可哀相」

この時の私は、まだ好奇心からで『可哀相』と言う、相手を侮辱し見下し、同情する言葉を吐きました。

〈あぁ、愚か者〉

それから私と姉は餌を分けたり、屋根を作ったりしてその猫をなんとか暮らせる環境にしようとしましたが、その家の人が全てを壊していき、次の日には餌も屋根もなくなっているのでした。


2003年、10月27日の夜。

外は雨と雷が鳴っていました。
私の家族は姉、父母、婆爺の六人でいままで猫を二匹飼っていました。
私と姉は猫の事を親に話すと、母と父はその猫を雨の中連れてきてくれました。
一緒に飼う事にしたのです。
お風呂に入れて乾かして……。
この日、10月27日を雌猫の誕生日としました。
猫の名前を私の名前から一文字取って『風花』と名付けられました。
私の誕生日は10月28日。今思うと、風花は私の誕生日プレゼントのような物だったのかも知れません。

〈風花…………〉

それから風花との物語が始まりました。
風花の足は動かせなくて、やっぱり前足での移動。
原因は分かりませんが、多分、車の事故か子供のイタズラだと思われました。

その為、風花は子供である私の事を嫌い、目の上やら顔やら手やら沢山の引っ掻き傷を残しました。
それでもだんだんと仲良くなり、私にって風花は妹のような存在になりました。

〈早く気付いて……〉

一緒に寝たり遊んだり、私は風花の半身。風花は私の半身のようになりました。猫?
人?
くだらない。
こんなにもお互いが存在し合えているのだから、やっと自分の半身に巡り出会えたんだ。
そう心から思いました。


〈だから気付かなかった。余りにも大切すぎて、近すぎて……〉

ついにその時が来た。


2005年11月16日。私は小学生五年生となりました。
その日は学校の社会科見学で、朝早く、誰にも顔を合わせずに学校へ行きました。
振り向きもせず。


〈学校など休めばよかったのに……〉

暗い帰り、バスの中には流れるテレビの音と友達の声が響いていました。
私はどちらも見ず、ぼぅっとしていましたが、友達が話しかけてきて、私はそれに笑いました。
多分、笑っていたのでしょう。


〈嘘つき〉

家に帰ると何故か、あのお線香の匂いがしました。
扉を開けると暗い空気。
暗い。
どうして?

横長のソファーの上を見てみると、匂いの元となっているお線香と、紫色の綺麗な布が『ナニカ』の上に被せてありました。
どうしたの?
なにがあったの?
ねぇ、なに?
こたえてよッ!!

ゆっくり近づき、紫の布をめくっていく。

いやだ。
いやだ。
やめて。
嫌だぁッ?!

その『ナニカ』が目に入った瞬間、頭の中が真っ白になりました。
文字通り、真っ白。
考えられない。
なのに、やけに鮮明に映える視界に頭がクリアになっていく。
あぁ、
嗚呼、



〈風花……〉

あぁあああああぁあああああぁあああああぁあああああぁあああああぁあああああぁああああっ?!

ねぇ風花。
どうしたの?

声が出ない。
こんなにも叫んでいるのにまるで声が出ない。

風花の口は少し開いていて、その瞳は何処までも何処までも続いているかのように酷く透き通っていて。
まるで全てを見透したかのように、

死んでいた。



鳴く、泣く、亡く、なく。
泣き通し風花を想う。
狂ったかのように泣き叫ぶ私。
風花は私に色々なモノをくれた。
じゃあ、私は風花に何をしてあげた?

願ったモノは別のモノ。
失ったモノは別のモノ。
手に入れたモノも、別のモノ?


〈もう遅い。二度とは逢えない。世界が違う。手が届かない場所〉

ようやく泣き疲れ、枯れ果てた頃。
私はこの世界を変えたいと思いました。


〈くだらない。〉

私は本が好きです。
だから小説家になって、もう二度と、私と同じ事が起きないように、腐った世界を変えたいと思いました。

〈絵空事。漫画の見すぎ。〉

私は風花の事を忘れないし、風花を否定する人は絶対に許さない。
それでも、少しでも何処かが変わればいいと願います。


〈どうせ出来やしない。〉
私が直接変えるのではなく、私が書いた小説を読んで誰かが変われば、それは誰かの世界を変えたと言う事になります。


〈所詮人任せ。逃げたがり屋。変えられるワケがないよ。〉

私がきっかけになればいい。
私は風花に会えるのなら、死ねる。


〈嘘だ。怖いんだ〉

怖いのは死ぬ事じゃなくて、失くす事。だから死にたがる。
いつかは全て手放さなくちゃならないと知っているから?


〈お願いだからこの世界を変えて。多分この願いは叶わないから……〉

ちがう。
死ぬ時に全てを手放すんじゃなくて……
死ぬ時に全てを手に入れるんだと思うよ。



私は風花を祈り続ける。
あの時流した涙は偽物なんかじゃない。

最後は笑って死にたいな。


〈願わくは、すぐ近くにあると、どうか気付けますように……〉


ねぇ、聞こえてる?
風花……。


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